マルキ・ド・サドを読む第一部『ソドムの百二十日』EP.6&7(2026-09-23 20:40) | 真性痴女ハードコアコネクション グランブルー厚木のSM店日記一覧

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2026-09-23 20:40マルキ・ド・サドを読む第一部『ソドムの百二十日』EP.6&7

マルキ・ド・サドを読む第一部『ソドムの百二十日』EP.6&7
■深夜二時、標本箱の並ぶ書架で

司書は今夜、これまで気づかなかった、ガラス張りの木箱がいくつも並ぶ一角へと、私を導いた。箱の中には、昆虫の標本や、乾燥した植物の葉が、丁寧にラベルを添えられて、整然と並べられている。

「前夜、私たちは物語を主導する四人の権力者について語りました」と司書は静かに言った。「今夜は、彼らが実際にこの城の中で行おうとした、この作品最大の特徴とも言うべき営みに、目を向けていきましょう」司書は標本箱の一つを、そっと持ち上げた。「分類するということ。この作品が、なぜこれほどまでに、欲望を体系立てて記録しようとしたのか。その発想の根を、今夜は掘り下げていきたいと思います」


SM奇譚 創戯旅団 外伝第78夜
世界禁書図書館~SM・退廃・倒錯文化研究~ 「マルキ・ド・サドという怪物」を読む
第一部『ソドムの百二十日』:「欲望を分類する」という狂気
episode.6 「欲望を“分類”するという発想」
※2026年09月22日20時20分【Livedoor、Ameba、FC2初稿】
※2026年09月22日19時33分【note有料投稿】


■第一章:この作品を貫く、分類という構造

司書は標本箱を、静かに書架へと戻した。「これまでの研究で、私たちは繰り返し、この作品が持つ『分類』という特徴に触れてきました」と司書は言う。「今夜は、この特徴そのものを、正面から見つめ直していきましょう」

私は、この分類という構造が、具体的にどのような形で作品に現れているのかを尋ねた。

「この作品の大きな特徴は、物語の進行そのものが、ほとんど目録のような形式で組み立てられているという点にあります。語り手たちが、これまでに見聞きしてきた様々な出来事を、一つひとつ、体系立てて語り、それが月ごと、週ごとに、整然と配列されていくという構成です。物語という、本来であれば有機的に流れていくはずの営みが、ここでは、極めて几帳面な記録の集積として、組み立てられているのです」

私は、この形式そのものが、読者にどのような印象を与えるのかを尋ねた。

「通常の物語であれば、読者は登場人物の感情の起伏や、出来事の因果関係を追いながら、物語世界に没入していきます。しかし、この作品においては、そうした情緒的な没入よりもむしろ、まるで目録を繰るかのような、ある種の距離を保った読書体験が、意図的に作り出されているように、私には感じられます。この距離感こそが、この作品を、単なる扇情的な読み物とは一線を画す、特異な文学として成立させている要因の一つなのです」

私は、この几帳面な記録という形式が、当時の他の文学作品と比べて、どれほど異例のものだったのかを、さらに尋ねてみた。

「極めて異例であったと言えるでしょう」と司書は答えた。「十八世紀の小説の多くは、書簡体や一人称の語りを通じて、登場人物の心情の機微を、丁寧に描き出すことに、その文学的な力点を置いていました。感情の揺れ動き、心理の襞を、繊細に描写することこそが、当時の小説というジャンルに求められていた、重要な美点だったのです。ところがサドは、この潮流とはまったく逆の方向を選びました。感情の機微を描くのではなく、出来事そのものを、無機質な記録として積み重ねていく。この選択そのものが、当時の文学的な常識に対する、一つの明確な挑戦だったのです」

■第二章:欲望をカテゴリー化するという営みの意味

司書は書架の奥から、古い分類目録のような装丁の一冊を取り出した。「欲望というものを、あたかも標本のように分類し、記録するという発想。この発想そのものが持つ意味について、考えていきましょう」と司書は言った。

私は、なぜ欲望という、極めて個人的で流動的なものを、あえて分類しようとしたのかを尋ねた。

「分類するという行為には、対象を掌握し、理解可能な範囲に収めようとする、人間の根源的な衝動が宿っています。本来、欲望とは、個々の人間の内側に、極めて多様で、捉えどころのない形で存在しているものです。それを、あたかも自然界に存在する生物種のように、明確なカテゴリーへと切り分けていくという営みは、この捉えどころのないものに、人為的な秩序を与えようとする、極めて知的な、そしてある意味で暴力的な試みでもあるのです」司書は目録をゆっくりとめくった。「この分類という営みによって、個々の欲望は、それぞれ固有の文脈や背景から切り離され、一つの独立したカテゴリーとして、記録されていくことになります。この操作は、対象を理解しやすくする一方で、その対象が本来持っていた、個別性や複雑さを、大きく削ぎ落としてしまうという側面も持っています」

私は、この削ぎ落としという側面が、この作品の持つ、ある種の非人間的な冷たさと、どのように関係しているのかを尋ねた。

「鋭い指摘です。分類という営みは、対象を理解可能にすると同時に、その対象から、生きた個別性を奪い取っていく作業でもあります。この作品を読んだ多くの読者が感じる、独特の冷たさや不気味さは、まさにこの、分類という行為に内在する、対象の個別性を消し去っていく暴力性から来ているのではないかと、私は考えています」

私は、この冷たさという特質が、当時の他の過激な文学とは、どのように異なる印象を読者に与えているのかを、あらためて尋ねてみた。

「良い視点です。当時、性的に扇情的な内容を扱った文学作品は、決して珍しいものではありませんでした。しかし、その多くは、むしろ情熱的で、感覚に訴えかけるような、熱を帯びた筆致で書かれていました。サドの筆致は、そうした同時代の扇情文学とは、対照的な性質を持っています。彼の文体は、むしろ乾いており、几帳面で、まるで会計簿をつけるかのような、冷徹な筆致で貫かれているのです。この温度の低さこそが、彼の作品を、単なる扇情文学の一種として片付けることを、困難にしている理由の一つなのです」


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「欲望を分類する」という狂気は、サドだけの発想だったのか?
ここから先は、十八世紀という時代そのものへと踏み込みます。

リンネの分類学
ディドロとダランベールの『百科全書』
啓蒙思想が生み出した「体系化」という欲望
「知ること」と「支配すること」の関係
人間の内面を分類するという発想
そして最後には、
「分類する」という行為そのものが、なぜ権力と結びついてしまうのか。

『ソドムの百二十日』を、単なる過激文学ではなく、
「人間を標本化する文学」として読み直していきます。
この作品における「分類」は、
単なる整理術ではありません。

欲望を知ること。
欲望に名前を与えること。
欲望を並べること。
そして、その欲望を持つ人間そのものを捉え直すこと。

その先に見えてくるものを、
ここからじっくり考えていきましょう。

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■深夜二時、数字だけが刻まれた石版の前で

司書は今夜、書架の奥にある、小さな石版の前へと、私を導いた。表面には、文字らしきものはほとんどなく、ただ、規則正しく並んだ数字だけが、浅く刻まれている。

「前夜、私たちは、欲望を分類するという発想そのものの、思想的な根について語りました」と司書は静かに言った。「今夜は、その分類が、実際にどれほどの規模で行われたのかという、具体的な数の問題に、目を向けていきましょう」司書は石版の数字を、指先でなぞった。「百五十。この作品が、欲望というものを、実に百五十種類にわたって数え上げ、記録していったという事実。この『数量化』という営みが、人間という存在にとって、何を意味していたのかを、今夜は考えていきたいと思います」


SM奇譚 創戯旅団 外伝第79夜
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第一部『ソドムの百二十日』:「欲望を分類する」という狂気
episode.7 「150種類の欲望という発想」
※2026年09月23日20時55分【Livedoor、Ameba、FC2初稿】
※2026年09月23日20時11分【note有料投稿】


■第一章:数量化された欲望という発想

司書は、石版から少し離れ、静かに語り始めた。「前夜論じたように、この作品は、欲望というものを、体系立てて記録しようとする、極めて几帳面な知的な営みに貫かれています。今夜注目したいのは、この分類が、単なる大まかな類型分けにとどまらず、実に精緻な、数量化された形で行われているという点です」

私は、この数量化という手法が、通常の物語の書き方とどのように異なるのかを尋ねた。

「通常、物語における欲望や情念は、数として数え上げられるようなものではありません。それは、登場人物の内面に流れる、連続的で、境界の曖昧な感情の動きとして、描かれるのが一般的です。しかし、この作品においては、欲望というものが、あたかも標本箱に並べられた昆虫のように、一つ、二つと、明確に区切られ、数え上げられていくのです」司書は石版の数字を、もう一度、静かに指し示した。「この数量化という発想そのものが、欲望という、本来は連続的で、個人ごとに無限のグラデーションを持つはずの現象を、あたかも有限個の、明確に区切られた項目の集合であるかのように、扱い直しているのです。この操作は、極めて特異な、そして、ある意味で暴力的な知的態度だと言えるでしょう」

私は、この数量化という発想が、いつ頃、どのような知的背景から生まれてきたのかを尋ねた。司書は少し目を伏せてから、答えた。

「この問いは、時代背景を考える上で、非常に重要です。この作品が書かれた十八世紀という時代は、まさに啓蒙の世紀でした。自然界のあらゆる事物を観察し、分類し、体系化しようとする博物学的な情熱が、社会全体を覆っていた時代です。リンネが動植物を体系的に分類し、百科全書派が人類の知を網羅的に整理しようとした、あの知的熱狂の空気の中に、この作品もまた生まれ落ちているのです。つまり、欲望を数え上げるという、一見グロテスクにも思えるこの営みは、実は当時の知的潮流と、決して無縁ではなかったのだと、私は考えています」

「言い換えるならば」と司書は続けた。「この作品は、啓蒙の時代が持っていた『分類し、体系化する』という知的態度を、最も禁忌とされる領域にまで、容赦なく適用してみせた、一種の極限実験だったと言えるでしょう。理性の光を、人間の理性そのものが目を背けたくなるような領域にまで、徹底的に差し向ける。この徹底性こそが、この作品を単なる猥雑な読み物から、思想史的な問題作へと押し上げている要因なのだと思います」

私は、この時代精神と、当時の分類学の具体的な手法との間に、何か形式的な共通点があるのかを、さらに尋ねてみた。

「良い着眼点です」と司書は頷いた。「リンネの分類体系が、界・門・綱・目・科・属・種という、階層的な構造を持っていたことを思い出してください。この作品における欲望の記録もまた、単に百五十個を横並びに列挙しているわけではありません。むしろ、単純な欲望から、より複雑で、より過激な欲望へと、段階的に配列されていく構造を持っています。この階層性は、当時の博物学が持っていた『単純なものから複雑なものへ』という進化論的とも言える秩序意識と、驚くほど似た構造を宿しているのです」


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150種類の欲望という発想。第一章では、「欲望を分類し、数量化する」というサドの発想と、18世紀の啓蒙思想、そして博物学に代表される「分類する知」の思想的背景を追いました。しかし、本当に恐ろしいのは、欲望を150種類に分類したという「数」そのものではありません。問題なのは、そもそも人間の欲望を、数えることができるものとして扱ったという発想です。「150」という数字が刻まれた瞬間、そこにあったはずの人間の感情や人生、葛藤や記憶は、少しずつ後景へと退いていきます。

一人の人間が持っていた複雑な人格は、「一つの欲望」へ。
一つの欲望は、「一つの項目」へ。
そして一つの項目は、「一つの数字」へ。

この変換が進んだ先に、一体何が残るのでしょうか。ここから先では、単なる作品紹介や刺激的な内容の解説ではなく、「人間を分類する」という行為そのものが持つ思想的な意味へと踏み込んでいきます。

■ 個人差を消していく分類
一人ひとりの人生が、カテゴリーへ変わるとき何が失われるのか。
■ 「一人の人間」から「一つの欲望」への還元
複雑な人格を、一つの欲望の体現者として扱うことの意味。
■ 人間を「標本」として扱う文学
登場人物が「人物」ではなく「観察対象」へと変わっていく構造。
■ 数量化と人間の尊厳
数字に置き換えられた瞬間、人間から何が剥ぎ取られるのか。
■ 理性による人間の標本化という逆説
「分類する」「記録する」「体系化する」という理性的な行為が、なぜ人間性の解体へと接近してしまうのか。

そしてさらに、
なぜサドは、欲望を「語る」だけではなく、それを「数え上げる」必要があったのか。
なぜ「150」という数字でなければならなかったのか。そこに、18世紀という時代そのものが持っていた「知への欲望」は、どのように入り込んでいるのか。

そして最終的には、
「人間とは何か」
「欲望とは何か」
「人間を理解するとは、分類することなのか」
という、作品そのものを越えた問いへと進んでいきます。

「150」という数字を、単なる作品中の数字として読むのか。それとも、人間を理解しようとする知性そのものが持つ、危うさの象徴として読むのか。ここから先は、その数字の奥に隠された思想を、一つずつ解体していきます。

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