マルキ・ド・サドを読む:第一部『ソドムの百二十日』EP.01(2026-09-16 21:49) | 真性痴女ハードコアコネクション グランブルー厚木のSM店日記一覧

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2026-09-16 21:49マルキ・ド・サドを読む:第一部『ソドムの百二十日』EP.01

マルキ・ド・サドを読む:第一部『ソドムの百二十日』EP.01
■なぜ司書は、深夜二時に語り始めるのか

初めてこの物語に触れる方のために、少しだけ前置きをしたい。この世界のどこか、詳しい場所は誰も知らない。古びた洋館の地下三階に、「世界禁書図書館」と呼ばれる書庫があある。そこには、時代や社会の都合によって、表舞台から遠ざけられてきた本たちが、静かに眠っている。禁じられた恋の物語、退廃を描いた小説、倒錯を扱った古い医学書。誰にも読まれることのないまま、埃をかぶって朽ちていくはずだった本たちばかりだ。この書庫には、一人の司書がいる。名前は明かされていない。年齢も、素性も、多くは語られていない。分かっているのは、彼女がこの膨大な禁書のすべてを把握し、それぞれの本が生まれた時代背景や、その本が辿ってきた数奇な運命を、驚くほど深く理解しているということだけだ。彼女がどのようにしてこの図書館の番人となったのか、その経緯もまた、多くを語られることのない謎の一つだろう。

なぜ、いつも深夜二時なのか。司書はかつて、こう語った。「昼の光の下では、人は本を、社会的な評価という物差しでしか見られません。けれど、深夜二時という、誰もが寝静まった時間には、その物差しを一度、脇に置くことができるのです。禁じられた本と向き合うには、禁じられた時間が必要なのですよ」と。さらに司書は、こうも付け加えた。「地下三階という場所にも、意味があります。地上から遠く離れ、日常の喧騒がまったく届かない深さまで降りてくることによって、人は初めて、世間的な評価や偏見という、目に見えない重さから、自由になれるのです。この書庫の静けさは、単なる物理的な静けさではありません。むしろ、判断を急がず、じっくりと本と向き合うための、心の静けさそのものなのです」

この物語の語り手である私は、ある夜、ふとしたきっかけでこの図書館に迷い込み、それ以来、夜な夜な司書のもとを訪れては、一冊の本について、語り合う客人となった。読者の皆様も、どうか私の隣に座るような気持ちで、司書の語りに耳を傾けてみて欲しい。専門的な知識がなくとも、心配はいらない。司書は、いつも、初めてその本に触れる人にも分かるよう、一歩ずつ、丁寧に語りを進めてくれる。これまで二十夜にわたり、私たちはレオポルト・フォン・ザッヘル=マゾッホという作家の一冊の物語を、丁寧に読み解いてきた。そして今夜から、まったく新しい旅が始まる。今夜、司書が案内するのは、これまで一度も足を踏み入れたことのない、ひときわ重厚な扉の奥だった。この新しい旅がどれほど長いものになるか、あらかじめ少しだけお伝えしておこう。今回は、一人の作家の代表的な四つの作品を、それぞれ二十夜ずつかけて、じっくりと読み解いていくという、これまでにない規模の長期連載になる。一人の小説家を語り尽くすために八十夜を費やすというのは、この図書館の歴史の中でも、初めての試みだ。それだけ、これから向き合う対象が、私たちにとっては途方もなく大きな存在だ。長い旅路なるが、どうか最後までお付き合いいただければ幸いである。同じ「暴力」「性」「自由」といった主題が、四つの作品それぞれの中で、まったく異なる役割を演じていく様子を、これから少しずつお見せしていく。単調な繰り返しにはならないよう、司書自身も、毎夜、新しい切り口を探しながら、この長い旅に臨んむだろう。どうか、気負わず、肩の力を抜いて、この長い連載に付き合っていただければと願っている。前置きが少し長くなった。それでは、司書とともに、この重厚な扉の奥へと、足を踏み入れようではないか。

■深夜二時、鉄格子の意匠を持つ扉の前で

司書は今夜、その重厚な扉の前に、私を立たせた。扉には、鉄格子を模した意匠が彫り込まれている。まるで、牢獄の扉を、そのまま書架の入口に移し替えたかのようだった。

「今夜から、長い長い旅が始まります」と司書は静かに言った。「これまでとは、まったく別の、そしてはるかに巨大な存在と向き合うことになります」彼女は扉に手をかけた。「マルキ・ド・サド。この名前を、単なる悪名として知っている方は多いでしょう。けれど、この図書館では、彼を、安易に断罪することも、安易に擁護することもしません。ただ、彼が何を書き、なぜそれを書いたのかを、時代という文脈の中で、丁寧に読み解いていきたいのです」

扉がゆっくりと開いていく。

SM奇譚 創戯旅団 外伝第73夜
世界禁書図書館~SM・退廃・倒錯文化研究~ 「マルキ・ド・サドという怪物」を読む
第一部『ソドムの百二十日』:「欲望を分類する」という狂気
episode.1 「なぜサドは『百二十日』を書いたのか」
※2026年09月16日22時11分【Livedoor、Ameba、FC2初稿】
※2026年09月16日21時33分【note有料投稿】


■第一章:石の部屋で生まれた巨大な構想

司書は、扉の奥にある、石造りの小部屋のような一角へと、私を導いた。窓のない、狭く、しかし奇妙に静謐な空間。壁に触れると、ひんやりとした石の冷たさが指先に伝わってくる。まるで、時間そのものが、この部屋の中だけ止まってしまったかのような、不思議な感覚に包まれた。

「1785年、サドはバスティーユの独房にいました」と司書は語り始めた。「政治犯としてではなく、素行に起因する幽閉です。長きにわたる監禁生活の中で、彼はある巨大な構想を練り始めます。それが『ソドムの百二十日』でした」

私は、なぜ独房という極限の環境が、これほど巨大な作品を生み出す土壌になり得たのかを尋ねた。司書は、狭い部屋の壁を、そっと撫でながら答えた。

「独房という場所は、身体の自由を完全に奪います。けれど、皮肉なことに、思考の自由だけは、誰にも奪うことができません。むしろ、外界からの刺激が完全に遮断されたとき、人間の想像力は、内側へ内側へと、恐ろしいほど深く潜っていくことがあるのです。サドにとってバスティーユは、身体を閉じ込める牢獄であると同時に、精神を極限まで自由にする、奇妙な実験室でもあったのでしょう」司書は、手元の古い記録に目を落とした。「彼はこの作品を、極めて小さな文字で、細長い紙を貼り合わせた、長大な巻物のような原稿に書き記したと伝えられています。獄中で紙も時間も限られていたからこそ、一字一句を無駄にできない、切実な執筆だったのだと考えられます」

私は、この巻物という執筆形式そのものにも、何か意味があるのだろうかと尋ねてみた。司書は少し目を細めた。

「面白いところに気づかれましたね。細長い紙を継ぎ足しながら書き続けるという行為は、物理的な制約への対処であると同時に、一つの構想を、途切れさせることなく、どこまでも書き連ねていくという、執筆そのものの姿勢を象徴しているようにも思えます。終わりの見えない欲望のカタログを、終わりの見えない一本の紙に書き記す。この符合は、決して偶然ではないのかもしれません」

私は、獄中での執筆という状況そのものが、作品にどのような影響を与えたのかを、もう少し尋ねてみた。司書は、静かに続けた。

「獄中の生活は、極めて単調で、変化に乏しいものでした。外界との接触を絶たれた人間にとって、時間の感覚そのものが、次第に曖昧になっていきます。そうした環境の中で、サドは、外の世界では決して許されない自由を、紙の上にだけ、際限なく広げていったのだと考えられます。皮肉なことに、身体の不自由が極まるほどに、想像力の奔放さもまた、極まっていったのかもしれません」


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   ここから有料パートです
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ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今夜の「世界禁書図書館」は、ここからさらに深い場所へ降りていきます。

第一章では、1785年のバスティーユという閉ざされた空間で、なぜサドが『ソドムの百二十日』という巨大な構想を生み出したのか。そして、限られた紙を継ぎ足しながら書き続けた、その執筆環境と想像力について見てきました。

しかし、これはまだ入口に過ぎません。ここから先は、「1785年」という時代そのものが、サドの思想とどう結びついていたのか。そして、なぜサドは、人間の欲望を「分類し、記録する」という異様な構造にまで押し広げたのか。さらに、現実に存在したサドという人物と、文学の中に作られた「怪物としてのサド」は、本当に同じ存在なのか。この三つの問題へと踏み込んでいきます。

過激な作品だから面白い。それだけでは終わらせません。「なぜ、このような作品が18世紀のフランスで生まれたのか」その背景を、一冊の禁書だけではなく、時代・思想・文学・人間そのものという複数の視点から読み解いていきます。

ここから先は、世界禁書図書館の有料閲覧区域です。深夜二時。司書は、次の書架へと歩き始めます。

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https://note.com/ideal_rabbit5011/n/nf42b5ff6e155
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