2026-08-09 04:14見える女(M奇譚 創戯旅団 第352夜)





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SM奇譚 創戯旅団 第352夜 深夜のほんとうにあった怖い話④見える女
※2026年08月09日04時04分【Livedoor、Ameba、FC2初稿】
※2026年08月09日04時04分【note無料投稿】
①仙台から出稼ぎに来ていた女
愛想と呼べる感情はこの人からは欠落していたと思う。というよりは、性格が悪いだけの人だったかも知れない。穏やかな気持ちで放置してしまい、おかしな状況が生まれたケースだった。本当に怖いのは人間であり、幽霊化したのは生きている人間では無かろうかと考えさせられた1件だった。仙台から出稼ぎで来ていた彼女は、最初から最後までお店で人気が出る事は無かった。1年半も月の半分を厚木エレガンスに出勤していたのだから、レギュラーメンバー相当の出勤数を確保していた。彼女の出稼ぎは助かっていたが、お客様を殺してしまうので、ありがた迷惑な人でもあった。最終的に首が回らなくなり辞めざる得ない状況に陥った。コミュ障級に接客は下手だし、お客様が腹を立てる事もかなりあった。何を話すと目の前の人間がイヤな気分になるかを計算出来ない人だった。簡単に言ってしまえば、接客業に向いてない。女王様をやっていたのだが、女王様は相手が考えている事を洞察出来て、地雷を踏まない演出を構築出来ない人に務まる仕事では無い。私が、S女スパイラルだとかサービス地雷だとか悪い例として挙げる要因を全て持っていた感情労働の資質に欠ける人だったのは間違いない。人は時に自分の失敗を認める理解力が無いままに、外的要因を原因にして、自分に責任が無いと思い込もうとする。他責。無責任。自分本位。人から嫌われる性格。感情労働者失格。女王様失格。不相応。ありとあらゆる罵詈雑言を浴びて、お店を去る。噛み合わない。ズレが生じる。これは大半の女王様が通過する儀式であり、そこからが女王様の本当のスタートラインだ。罵詈雑言を浴びる事はSMクラブ界隈では、『おわり』ではなく『はじまり』なのだ。ところが、彼女の意識はその方角には向かわなかった。いつもの仕事の話のような冒頭なのだが、これはれっきとした怪談話だ。彼女の場合は他責であるとともに、心霊現象へと話を転換してしまった。私から見るとただの虚言癖。1階の店舗に幽霊が居ると言い始めたり、次第に幻を見るようになってきた。人の気を引きたいとか逃げ口上なら虚言癖と結論付けるが、本人の中で本当に見えているのだとしたら別の話になる。脳に欠損を抱えている場合も想定しないとならない。嘘つき呼ばわりする事は出来ない。しかし、全肯定する事はもっと出来ない。私に見えないものを肯定する気にはなれない。そのロジックを考えてみた事がある。現実逃避の典型例なのかと疑った。自分の中で理解したく無い物事を、霊に変換してないか?と考えた。彼女は、盛り塩を店のあちらこちらに置くようになった。『こんなものを勝手に置くな!』と処分したい気持ちになったが、こちらまでそんな事したら呪われるのではないかと思えてきてしまうから、人間の精神構造は不思議だ。私が本人に恨まれているのは分かるが、いつの間にか呪われた風俗店に書き変わってないかと思うのだ。しかし現実は残酷だ。どんな言い訳を用意しても、三振ばかりする選手をスタメンで起用するプロ野球監督は皆無だ。風俗店も例外ではない。お客様に嫌われた時点で数字は叩けなくなる。お店側に不信感を抱かれた時点で良いお客様はレギュラーメンバーにしか回らなくなる。メインサイクルからは完全に外れる。負のスパイラルに完全に陥り、詰んだ女王様だった。恨んでは居ない。結果が出ないまま1年半も出稼ぎを続けていた事に、感謝すらしている。彼女が去った翌日に盛り塩は全て処分した。お店が呪われている物語は彼女の退店とともに幕を閉じた。人騒がせな幽霊騒動だったと思うが、幽霊騒動に同調する人間が誰一人居なかったのは興味深かった。眉唾な事を言っていると思っていた人間が大半だったのだ。『見えているのは君だけだから、辞めた方がいいと思うよ』とは言わなかったし、『ひょっとしたら脳に欠陥があるかもしれないからお医者さんに見て貰うべきだ』とも言わなかった。静かに冷ややかに動向を見守っていただけだった。彼女の退店と共に、幽霊騒動はフェードアウトした。見えない人だけの、厚木エレガンスに戻り平穏を取り戻した。魑魅魍魎は誰の脳に巣食っていたのだろうか。
②大柄だが人懐っこい真性M女
彼女は第一期エレガンスの主力メンバーだった。週末にしか出勤しないし、生理の時は休んでいたので、月に出勤するのはせいぜい4回〜6回だ。お料理研究会があった頃は夏休みやお正月には泊まり込み合宿に参加していた。第一期エレガンスとはそんなノリでもあった。師匠がそれを我慢してくれていたから出来た事だと思っているし、我慢をしていた師匠には感謝している。彼女は見える人だった。見える話の大トリは彼女だ。愛想はいいし真性M女なので性格は穏和な人だ。欠点があるとしたら、大柄だった事。化粧をするよりすっぴんの方が可愛いかった事。仕切り癖があり、その輪に入ってこない人間とは仲良く出来ない事。部分的にコミュ障の様な偏った性格ではあった。聡明では無いが馬鹿でも無い。そんなところだったろう。私同様にSMクラブや接客の構造理解は中途半端だったと思う。それが彼女の指名が少なかった原因だ。それともう一つ。派遣型風俗の売れるポイントを本番と思ってしまっていた節がある。SMの基本が技術至上主義寄りだったのも転ぶ要因となった気がしている。人を繋ぎ止めて風俗店に利益を還元する事が風俗嬢としての評価基準だ。その構造バランスが日本の風俗店では半分崩れている。構造崩壊はお店の所為でも、キャストさんの所為でも、お客様の所為でも無く、中間搾取業者が風俗業界を壊してしまったと、私は分析している。真実は違うかも知れないが、店舗、キャスト、お客様は何かが欠けると風俗では無くなるが、中間搾取業者が消えようとも風俗業界は続く。最初に業界から消滅させるべき業種が中間搾取業者である事は明白だ。CtoCにアジャストするのだからビジネスである店舗も必要無いのでは?という意見が聞こえてきそうだ。しかし風営法の存在を忘れてはならない。個人がお客様を取る事を風営法が禁じているのだ。すると店舗側のBは存続する事になる。別に私はこのBが無くなっても構わない。私は個人としてのSM文化圏を構築し始めているので、私をC基準にして、カスタマーが私を雇う構図でも、私とキャストが業務提携する仕組みでも対応出来る体質変更を作り込んでいる最中だ。彼女はSMが好きでSMクラブが好きな人間だ。本来ならばエレガンスに残る資質を持っていておかしくなかった存在でもあった。ところが風俗やSMクラブの構造理解は相当に欠けていた。これがお店との歪みを大きくした。第一期はバック率は50%だったが保証が付いていた。それを第二期に私が経営者になるタイミングで7割(オプションフルバック)、保証無しに変更した。補償が生き残る生命線になっていた彼女にとっては死活問題となった。大柄なルックスだったので、入口商売でもある派遣型風俗とは相性が悪い。しかも厚木エレガンスは本番完全否定のお店だ。黙認でさえ無い。この構図が彼女の生命線を完全に消し去ってしまった。第二期にアジャストする事は可能だった。何故そうならなかったのか?それは彼女も見え始めたからである。彼女も盛り塩を置き始めた。ネットが人々の生活の本線に入り込み始めてから発展を遂げた業界やコンテンツが増え、スピリチュアル、霊波、精神世界、幽体離脱、宗教、都市伝説、超能力等の不思議な力や世界観を信じたい人が以前より激増した。ネットが普及する前から普通にあった世界だが、ネットを通して急激に拡がりを見せた時代だった。ネットがなければムーいう雑誌を読まないと分からなかった事も、今では多くの人間に知れ渡る事になった。センシティブやセンセーショナルな話題はアルゴリスムと相性が良かった。結果としてスピリチュアルな世界に倒錯する人が増えたのも、盛り塩事件と無関係だったとは言いきれない。彼女には仲の良い女王様が居た。優しいが聡明とは言い難い女王様だったが、その女王様と彼女は波長がシンクロしていた。私もその二人とは大半の時期は仲が良かった。しかし、私がシステムを変えた時点からは急激に関係が悪化した。そんな中で一つの大事件が起きた。私が1階のピンサロから水道代として徴収した1万円が紛失したのだ。しかも、そのタイミングで彼女が不自然に私の部屋を掃除する出来事があった。この事件が非常にまずかった。金銭の紛失に関してだけは疑わしい人間は全員罰するのが私のスタンスだ。絶対に起こってはならない問題だったと捉えている。それがあのタイミングで起きてしまった。しかも、それだけでは無い。残念でならなかったが、お店を乗っ取るとか、全員で辞めるとか、裏でそんな計画を画策していた。大半のキャストさんに取っては迷惑な話でしか無い。お店がおかしな方向に傾いてしまう事は、誰から見ても不本意だ。結果として何人もの人間からLINE画面の証拠付きで報告を受ける事となった。この時点で、彼女と彼女の相方のお店での立場は完全に詰んだ。二人に『辞めるんだって!』と全部知っているよと先制攻撃をかけた。すると年明けで辞めると言ってきた。私は、今日で(12月初旬だったと記憶している)辞めてくださいとクビを宣告する事となった。話し合いの余地など残されていない。不良債権を問答無用で切り捨てる冷酷な判断で、第二期初頭の混乱を乗り切った。あの時は選択肢なんか用意されてなかったと感じている。一つだけ残されいた生存ルートを針の穴を通す感覚で歩んでいた。彼女を擁護するわけでは無いが、私のお金の盗難事件の犯人が誰かは分からなかった。監視カメラを設置していれば断定出来たが、監視カメラは付いてなかった。状況証拠を持って犯人を断定する事は出来ないので疑わしい人間は全員解雇する事になった。この荒療治が功を奏して第二期エレガンスは軌道に乗った。ドラスティックにメンバーの入れ替えを行なったのが、お店を救う事になったのだろう。彼女も盛り塩をして悪い気を追い払うと真顔で語っていた。何の解決策にもなっていない。インチキ宗教家やインチキ霊能力者と行動が酷似しているのだが、自分の成績が改善されると本気で思ってしまうのはいたたまれない気持ちになる。私への責任転嫁は無惨にも失敗に終わり、クーデターも未遂で終わった。あたり前だ。あの時は、私にしかエレガンスを救う事は出来なかったからだ。常識さえ持ち併せていれば、それくらいは誰にでも理解出来る筈だった。暴れたり不満を語るのは無責任な人間だったから出来た事だろうと思う。責任ある立場の人間ならば、事態の収拾を最優先に考えて行動していた筈だ。皆さんも覚えておいて欲しい。怪奇とは誰かの思惑に巧妙に左右されているケースが大半である事を。怪奇とマネタイズとアルゴリズムの相性が良いのがとても気になる。まるで都市伝説の様な、陳腐な情報操作を画策する人間が多いのは興醒めだ。その程度の浅知恵は簡単に見破れるのだが、実害を被るから許し難い。SMクラブはいつだって怪奇現象の連続だ。その大半は人怖いから来ているという象徴的な出来事だったと苦笑いしか出てこない。