電車でも、徒歩でも、職場でも。
たまに イヤホンを片耳だけ外してる人 を見かける。

あれ、太郎はずっと思ってるんだけど──
完全に “支配と自由の中間地点” なんだよね。

両耳ふさぐと世界はシャットアウトされる。
ゼロか百かの完全支配状態。
自分だけの世界にこもるタイプのS気質。

でも片耳だけ外す人は違う。

音楽の世界と現実の世界、
どっちにも片足突っ込んでて、
どっちにも完全に支配されない。
それでいて、どっちも捨てられない。

あの曖昧なバランス感覚が、
たまらなく “Mの余白” を感じさせる。

しかもさ、片耳を外してる時の表情って
なぜか少しだけ“弱さ”が出る。

注意は外へ向けてるのに、
心はまだ音楽の中に半分残ってる。

これがまた、
「どっちかに委ねたいのに委ねきれない人」
って感じで、どうしようもなく人間らしい。

Sのように自分の世界を貫けず、
Mのように全てを明け渡すこともできない。

言うなれば、
“選ばないことで気持ちよさを保つ”タイプ。

意外とこういう人が、
本番のSMでは一番振り切れる。

普段ため込んでるバランス感覚が、
スイッチが入った瞬間に全部崩れるからだ。

そして太郎は思う。

片耳だけ外すという行為は、
日常の中で唯一、
「世界との距離を自分で決めていい瞬間」
なんじゃないかと。

外界の音をどれだけ入れるか、
自分の音をどれだけ残すか。

その調整は、
まさに“心の主導権”の微調整。

SでもMでもなく、
どちらでも揺れ動ける人間の余白。

そのどれでもない曖昧さが、
実は一番エロいのかもしれない。