一見すると
“SFガジェット×子どもたちの物語”
という構造で、どこか「ド〇えもん」を連想させる。
しかし物語を読み進めると、
その印象は正反対の方向へ突き進んでいく。


そこには悪意も打算もなく、ただ「助けたい」
という子どもじみた衝動だけがある。だが、
その衝動が触れた世界は、救済ではなく崩壊を迎える。

ド〇もんは、未来の道具で子どもたちの問題を
コミカルかつ教訓的に解決していく。
の〇太は失敗しながらも、最終的には現状を肯定され、
世界は“リセット可能で安全”という優しい前提で守られている。
そこでは、失敗は成長のきっかけであり、道具は希望の象徴だ。

一方、タ〇ピーは道具を持ってきた存在が、何の悪意もなく、
しかし知識や倫理観の欠如によって、
現実の地獄を増幅させてしまう。
未来のテクノロジーは希望ではなく、悲劇を加速させる
“無垢な悪”として描かれる。の〇太ポジションの子どもたちは守られず、
失敗は回収されず、不可逆的な破滅へとつながっていく。

ここにド〇えもんの“アンチテーゼ”がある。
「道具は持つ者の知性と環境次第で、幸福にも悲劇にもなる」
「時間や現実をいじることは、優しさだけでは救えない」
タ〇ピーは、ド〇えもん的な“やり直し可能な夢の世界”を
真っ向から否定し、むしろ現実の不条理や残酷さを鮮明に突きつけてくる。

ド〇えもんが“もしもボックス”で叶えるのは安全なifだが、
タ〇ピーが生み出すifは、取り返しのつかない現実改変だ。
そのギャップこそが、読後に感じる胸のざわつきであり、
「これはド〇えもんの裏側にある影だ」と思わされる最大の理由だろう。