昔ね、ちょっとしたブームだったんです。
激辛ラーメンを“修行”のように食べ歩いてた時期がありました。

唐辛子がこれでもかと乗った真っ赤なスープ。
レンゲひと口ですでに口の中がヒリヒリしてくるようなやつ。
そんなのを、黙々と、汗だくになりながら完食する——。

…今思うと、**本当に美味しいと思って食べてたか？**って言われると微妙で。
「旨い」より「耐えた」の方が印象に残ってる。
口は燃えてるし、鼻は垂れるし、視界も滲む。
けれど、そこを乗り越えて、冷たい水をゴクリ。
そのあとに吸うタバコがまぁ、うまいこと。
あれこそご褒美だったんでしょうね。

痛みが好きなわけではないんです。
でも「耐える快感」には、ちょっと心当たりがある。
となると…俺にもMの素質、あるんですかね？

SMの世界にいると、“受ける快楽”ってよく話題になるんですけど、
それって別に鞭とかロウソクとか、そういう直接的な痛みだけじゃなくて。
“限界の中にある甘美”みたいなものに、惹かれてる人も多い。

……と、激辛ラーメンの思い出だけでここまで語れるあたり、
俺もこの業界、長いのかもしれません。

さて、今日も一日、修行——じゃなくてお仕事、頑張りましょうか。