2024-07-09 15:51覚えてくれてたんだね
その日、たまたま事務所にいると電話がなった。
あまりスタッフさんが電話を取るところにいない私でさえ。
その電話番号を見るのは3度目だった。
「あいにくそのお時間はご予約先行してまして……はい、すみません。めいさんまた明日も出勤予定ですので……はい、またお願いします。」
予約の電話だと意気揚々と受話器をとったスタッフさんは、しおしおとして受話器を置いた。
「ねえ、このお客さんすごいんだよ。
こんなにめいさんだけに問い合わせ何回もしてきてて、でも毎回時間が合わなかったり色々で会えてないの。
前のお店のお客さんなのかな?ほんとに一途だよね。」
そう言って見せてくれた着信履歴は半年ほど前から続いていて。
私はその一途さに、嬉しいようなこわいような(笑)複雑な気持ちになっていた。
そして、ようやく時間があって会えたこの間の金曜日。雷雨の日。
もしかしたら、知っているお顔だろうか……そんなことを思いながらドアを開けて。
部屋の中で待っていたその子を見て、ああ何にも知らない子だ、ただの熱烈なファンの子だったんだって。そう思った。
でも、部屋の中に私を迎え入れたその子が言うのだ。
「ぼく……実はめいさんに謝らなきゃいけないことがあって……。」
初めましての子からご挨拶のその前から謝られる事などない。
プレイ中ならいざ知らず。
身構える私に、その子は続けた。
「ぼく、実はずっと前〇〇さんの時に会ったことがあるんです……。」
ずいぶんなつかしい名前だった。
〇〇。
その頃の私はまだ、M性感をはじめたてで。
前立腺の位置もあまりわかっていない、プレイの善し悪しも分からず、ただ何も分からないなりに目の前の人間と時間を楽しもうと過ごしていた。
とにかく日々に必死だった時の名前。
私は〇〇でいられる時間が好きだった。
日々求められる、その時間が。
必要とされていて、みんなに好きって言ってもらえるその時間が。
大好きだった。
おそらく、その頃は人生で最高数だったんだと思う。
毎月逢いに来てくれる本指名の変態ちゃんの数。
数が全てでは無いけれど、お店でもその数を褒めてもらえて。
毎日たくさんの変態ちゃんが逢いに来てくれて、楽しかったって笑ってくれて。
それは、その頃の私にとっては確かに私を安定させてくれていたものだった。
今の私が絶対に言わないセリフ、あの頃の私がよく言っていたセリフ。
「可愛い変態ちゃんのこといーーーっぱいよしよしして、たっくさん喘がしちゃった♥声枯れるくらい可愛い喘ぎ声聞かせてくれてありがとう♥
次会えるまでに浮気したらヤだからねっ♥
次会えるまで、ぜったい〇〇のこと思い出してオナニーしててね♥」
まあ、話は逸れてしまったけど。
その子が言うんだよ。
4年間忘れたことはなかったですって。
未だにあの頃のプレイを思い出してオナニーしてますって。
久しぶりに甘々でプレイして。
あの頃よりもっと前立腺気持ちいいです……相変わらず上手だしもっと上手くなってる気がします……!って。
あの頃もめちゃくちゃ可愛かったけど、今も変わらずかわいいって。
ショートカットも似合いますねって。
本当に欲しい言葉全部もらえちゃって。
すごくすごく、うれしかったよ。
うれしくて、心がふわふわした。
2020年、6月11日
きみに初めてあった日。カウンセリングシート、残ってたの。
カウンセリングシート見てたら、あの時の君を思い出してきて。
金曜日、君を見てもすぐに分からなかった理由がわかったよ。
これじゃ、すぐ分からないはずだよ。
あのころの君は髪もツンツンさせてなくて、すごく分厚い眼鏡をかけてた。
眼鏡の奥に見える目がすごく小さく見えて、それが嫌だって言ってたよね。
コンタクトにしたんだなってなんだか嬉しくなっちゃったよ。
〇〇をまだ覚えててくれて、好きで居続けてくれてありがとう。
忘れないで思い続けてくれて、また会いに来てくれてありがとう。
これからも、いっぱい技術磨いて、君のこと魅了したいな。
一生忘れられない、素敵な女の子でいたい。
めい